新入社員の「辞めたい」を「がんばろう」に変える関わり方

売り手市場の中、新入社員を迎え、入社式や研修を終え、これから職場で成長を期待されるという会社も多いのではないでしょうか。

しかし、ご存知の通り、せっかく採用しても、約3割は3年以内に離職しています。高卒者だともっと高い数値になります。

大学卒業者の1~3年後離職率

【2017年9月 厚生労働省公表「新規学卒就職者の離職状況」より抜粋】

早期離職によるコスト、せっかく育てた社員の流出の損失は大きいです。多くの企業で定着対策として、「採用前の丁寧な情報提供」「教育訓練」「労働時間の短縮」「両立支援制度の充実」など、様々な施策に取り組まれている企業も多いと思います。

これらの施策がより有効に機能するためには、やはり職場での関わりが最も重要です。今回は、「もうちょっと、ここでがんばってみよう」と自らを立て直すことができる社員を育てる職場の関わりについて、特に新入社員にスポットを当てて、ご紹介します。

「こんなはずじゃなかった…」離職は理想と現実のギャップが原因?

入社したての頃は頑張ろうと期待や希望に満ちていることと思います。しかし、配属先で仕事をする中で、厳しい現実を目の当たりにします。

2017年2月に発表された独立行政法人 労働政策研究 ・ 研修機構の調査によると、「初めての正社員勤務先を離職した理由」として、

  • 労働時間・休日・休暇の条件(男性0%、女性33.2%)
  • 人間関係(男性5%、女性29.7%)
  • 自分がやりたい仕事とは異なる(男性9%、女性23.4%)
  • 仕事が上手くできず自信を失った(男性3%、女性26.4%)
  • やりたい仕事とは異なる内容だった(男性3%、女性26.4%)
  • 肉体的・精神的に健康を損ねた(男性9%、女性 34.3%)

などが上位に並びます。

これらの離職理由は、「こうだったはず」「こうしたい」「こうだったら良いな」という理想と、現実とのギャップが埋まらず離職に至る、または、そのギャップに適応する事が難しく、体調や心のバランスを崩して、離職に至ることを表しているように感じます。

ギャップや壁を乗り越え、がんばってみようと思える社員を育てるには

企業が労働時間や休日などの勤務条件を偽って募集しているケースは別ですが、そうでない場合でも、配属先や仕事内容など、本人の希望と異なる場合もあるでしょう。実際には、なかなか希望通りにはならない場合の方が多いのではないでしょうか。

離職する事が必ずしも悪い事ではありませんが、せっかく縁あって入った会社です。「この会社でがんばっても意味が無い。無理だ。」と思いかけている社員を、「この与えられた環境でもうちょっとがんばってみよう。」と思いなおしてもらいたいものです。

自分で気持ちの立て直しができれば良いですが、そのような社員ばかりではありません。日ごろ、一番近くにいる上司や先輩、または人事の方たちが、彼ら、彼女らが壁にぶつかった時、心を開いて、その悩みを打ち明けてもらえる存在でいられたら、早い段階で力になることができるのではないでしょうか。

そのような心を開いてもらえる存在になるための第一歩として、「この人は私の話を大切に聴いてくれている」「理解しようとしてくれている」と相手に感じてもらえるように聴くこと(=傾聴)が大切になります。

そこで、この相手を支援しようとする時の基盤となる信頼関係を築くための【傾聴】のコツをご紹介します。

【傾聴のコツ】

①    評価判断をせずに聴く 

②    思いを受け取って聴く

③    話しやすい場を作る

上司や先輩は、自分も通ってきた道ですから、良かれと思って、ついつい先回りしてアドバイスや指導をしたくなります。しかし、相手の話を自分の価値観や評価軸に当てはめて、評価判断しながら聞くと、相手は耳や口、心を閉ざしてしまいます。評価判断せずに聴きます。

そして、相手の言葉や態度の裏にはどんな思いがあるのかを受け取りながら聴きます。仕事がうまくできずに自信を無くしたということは、やりとげたい、貢献したいと思っているからなのです。職場に馴染めないということは馴染みたいと思っているからなのです。

相手を支援する時は、作業をしたり、他のことを考えながら聞くのではなく、100%相手が主人公だと意識し、相手が話しやすいよう関心を示しながら、聴くことがポイントです。

「この人は、私の話を大切に聴いてくれる」という経験が少しずつ積み重なると、「こんなに大切に聴いてもらっているということは、私を大切だと思ってくれているかもしれない」と感じ、上司や先輩のことを「大切な人だ」と感じます。

そして、「私はこの場所で必要とされているのかも」と自尊感情や自己肯定感まで高まります。この自己肯定感があってはじめて、その先に「できるかもしれない」「がんばってみよう」と思えるようになるのです。

新入社員が定着する職場作りは、信頼関係を築くことから

少し元気が無いな、いつもと違うなと感じた時は、まずは3分、新入社員や部下の話を聴いてみてください。その後、アドバイスや指導が必要な場合もあるでしょうが、まずは最初にこの聴き方で聴きます。この聴き方は、新人だけではなく、ベテラン社員との信頼関係を築くのにも有効です。

もちろん本人の頑張りも必要です。そんな頑張る新入社員になってもらうために、部下を観察し、気にかけられる上司、心を開いてもらえる先輩をもっと増やしていきたいものです。それが、新入社員を含めた社員が定着する職場作りの第一歩ではないでしょうか。