何かあった時に相談できる職場の重要性
こんにちは。人材育成コンサルタント 土元紀子です。
今回は、「何かあった時に相談できる職場の重要性」について考えてみたいと思います。
このような職場が増えたら、このエピソードにある離職や、報道されている不正問題も少しは減るのではないでしょうか。
【エピソード】何も言わずに退職する部下
ある職場で、こんなお話しを伺いました。
入って3年目の若手社員が急に来なくなってしまった。 携帯電話に連絡しても、出ない。親元にも連絡していないようだ。 原因は分からないが、その数日前、彼の手続きの不備で、取引先を巻き込む大きなミスをしたから、そのせいかもしれない。 そうこうしているうちに、退職届が郵送されてきた。 |
入社3年目といえば、ようやく一人前になり、これから頑張ってもらいたい時期ではないでしょうか。
未来ある若手社員です。
仮にミスが原因だったとしても、上司や周囲は退職なんて望んでいないはずです。
問題が大きくなる前に、本人が先輩や上司に「どうしましょう?」と相談が出来ていたら・・・
周囲が、本人の様子の変化に気付き「どうした?」と声をかけてあげられてたら・・・
と思わずにはいられません。
何かあった時に相談できる関係を築いておく重要性
何かあった時に相談できる職場、特に、上司と部下がこのような関係を築いておくことは重要です。
では、改めて、なぜ、そのように相談できる関係を築いておく方が良いのか、考えてみます。
- 部下の異変に気付き、離職やメンタル不全に至るまでに支援ができる
- ミスが小さい時に上司に情報が入るので、トラブルを最小限に抑え、改善することができる
- 失敗した時、うまくいかない時に相談を受けることで、隠ぺいや不正を防ぐことができる
- 部下が安心して仕事ができる(チャレンジしやすい環境を作ることができる)
信頼関係を築き、安心して話せる場を作る
何かあった時というのは、おそらく良い話、褒められた話ではありません。
そのような時に、「この人に相談しよう」と思える関係というのは、一日二日で出来るものではありません。
「何かあった時に相談できる関係」を作るためのポイントをまとめてみます。
◆人間関係を破壊する7つの習慣を使わない (自立を促す習慣 その10)
選択理論心理学によると、以下の7つを使うと人間関係は破壊します。
①批判する
②責める
③がみがみ言う
④文句、苦情を言う
⑤罰する
⑥脅す
⑦コントロールするために褒美でつる
この7つの関わりを使うと、一時的には相手(部下)が自分の思い通りに行動し、うまくいったと勘違いするかもしれません。
しかし、部下は上司のことを「嫌な人だなぁ」と思うでしょう。この関わりを続けることによって、信頼関係は確実に崩れます。
いざという時に、心を開いて、相談しようと思える関係を築くことは難しくなります。
使わないように意識することが大切です。
上司だって人間。もし、使ってしまったら・・・率直に謝りましょう。
そうすることで、部下は大切に扱ってもらえたと感じます。また、上司自身が自分を省みる人間だということが伝わります。
◆部下の様子を観察し、声をかける
普段から、一人一人の部下の様子を観察します。
忙しくて、そんな時間無いよ・・・と思われるかもしれません。四六時中でなくても、出社してくる時、朝礼の時、電話での声など、部下との接点があるタイミングで構いません。
部下に様子に気をつけていると、「今日は元気が無いな」「最近、目を合わせないな」など変化に敏感になります。
仕事の場に感情は持ち込まない方がよいのかもしれませんが、やはり人間です。
何かおかしいな、と感じた時は、タイミングを見計らい「どうした?何かあった?」と言い出しやすい場を設けます。
たとえ、相手が何も言わなかったとしても、気にかけているということは伝わるのではないでしょうか。
◆信頼関係を構築するために、いつも安心感のある安全な場をつくり出す (自立を促す習慣 その11)
もし、誰かがミスした時、うまくいかなかった時、みんなの前で大きな声で注意、批判、叱責されていたら・・・。
周りで聞いている部下は、「自分も同じようにみんなの前で叱責されるのでは」と口をつぐんでしまい、隠ぺいを生み出してしまいます。
どのような話でも安心して話せる「場」が必要です。まずは否定せずに、受取って聴くようにします。
改善のための指導はそれからです。
まとめ
以前の職場は、時間的なゆとりもあり、職場全員で若手社員を育てる風土がありました。また、昨今は打たれ弱い社員、部下が増えているのかもしれません。
しかし、そのことを嘆いていても、残念ながら以前には戻りません。
本人が打たれ強さ(レジリエンス)を高めていくことは必要ですが、職場全体で信頼関係が網の目のように結ばれ、何かあった時に、心を開き、相談できる職場を作っておくことで、こぼれ落ちていくことを防ぐことができるのではないでしょうか。
参考:自立を促す14の習慣 <<自立型支援方法>> 喜田菜穂子氏著