部下がミスした時こそ指導のチャンス!成長を促す効果的な叱り方
部下を指導するタイミングとして重要なのは、部下がミスをした時ではないでしょうか。
部下がミスをした時こそ、パワーハラスメント(以下、パワハラ)と受け取られず、毅然と叱る。
上司の叱り方で、部下は変わります。
こんにちは。土元紀子です。
経営者の方や人事の方とお話しをしていると、
「パワーハラスメント(以下パワハラ)と受け取られるような指導も困るし、かといって、甘すぎるのも困る」
というお声をいただきます。
また、上司の方からは「パワハラや関係悪化が気になり叱りにくい」、叱るのは苦手とおっしゃる方も多いです。
適切に部下を指導する、特に「効果的に叱る」ことが出来る上司が求められていると強く感じます。
上司の思いが伝っていない残念な現状
公益財団法人 日本生産性本部が2013年7月に発表した『第2回「職場のコミュニケーションに関する意識調査』によると・・・
叱ることが「育成につながると思う」課長は89.0%いる一方、叱られると「やる気をうしなう」一般社員は56.8%にのぼるというデータが出ています。
上司は、部下に同じミスを繰り返さないで欲しい、育ってほしいと願って「よかれ」と思って叱っているにもかかわらず、残念な結果になっています。
部下のやる気を奪う!やってしまいがちな叱り方
部下がやる気を失ってしまうような、効果的ではない叱り方として、2つのパターンを紹介します。
1つは、「感情的に怒る」、もう1つは「理詰めで説教する」です。
効果的ではない部下指導 その1:感情的に怒る
「感情的に怒る」は、以下のような関わり方です。
- 自分の感情をぶつけ大きな声を出す
- 机を叩く、ドアを激しく閉めるなどモノにあたる
- 変えられない過去の失敗を責める
- 「だからお前はダメなんだ!」など人格を否定する
- 「どうしてくれるの!」などと保身が入る
怒る側の上司は感情がどんどんエスカレートします。
怒られる側の部下は、耳や心を閉ざし、嵐が過ぎるのを待つという状況になりがちです。また、「この上司はこの程度の指導しか出来ないのか」と思う部下もいるでしょう。
効果的ではない部下指導 その2:理詰めで説教する
一方「理詰めで説教をする」は、以下のような関わり方です。
- 論理的に「正しいこと」を振りかざし、追い詰める
- 後輩などを引き合いに出し比較する
- 「このままいくと、こうなってしまう」と決めつける
部下指導において、この「理詰めで説教」が、実は職場で一番多いのです。
上司は「正しいことを言わねば分からないだろう」と良かれと思っています。しかし、「正しいこと」をこんこんと理詰めで言われ続けると、部下は、自分の間違っていることを突きつけられ、委縮します。また、上司は奮起してもらいたいと後輩などと比較すると、部下は自分の未熟さを見せつけられます。比較された後輩との人間関係も悪くなります。
(実は・・・私は、感情を抑えて叱ることを意識し、この叱り方が正しいと長年思ってやってきました。)
効果的ではない部下指導が生み出すこと
これらの効果的ではない関わり方が続くと、部下は追い詰められ、メンタル不全になってしまったり、場合によっては、パワハラだと訴えることもあるかもしれません。
そのような状態にならなくても、ミスや間違った行動が改善されにくいですし、部下は仕事に対する意欲がそがれます。
「また怒られるのではないか」という不安から新しいことや、高い目標にチャレンジしなくなります。
そして、良い仕事をしていくために必要な上司や部下との信頼関係や職場の人間関係、チームワークが損なわれてしまいます。
本来、職場で目指してほしい姿とは離れていってしまいますね。
部下指導で迷わない!叱る目的を抑えよう
では、そもそも、何のために叱るのでしょうか?
私が所属しているNPO法人マザーズサポーター協会 メンターマネジメント協会の定義をご紹介します。
「叱る」目的は、相手が、冷静に「今」の自分を自覚し、方向性を間違わず、主体的に行動を改善すること
部下に反省させるだけでは、行動の改善につながりません。
また、間違った行動、ミスをうやむやにしていては、部下は間違いを自覚せず、同じ失敗を繰り返す事でしょう。
部下が、やる気を持って、主体的に行動を変えられるよう、まずは、この目的をしっかり押さえ、ブレずに意識して叱るということが大切です。
主体的な改善を促す「効果的な叱り方」とは
叱る目的にある、「自覚を促し、方向性を間違わず、主体的に行動を変えることを生み出す」ために、どのように叱れば良いのかをみていきます。叱り方研修ではロールプレイを通して体感していただいていることを抜粋してお伝えします。
【部下をやる気にする!効果的な叱り方 5つのポイント】
1.部下の思いを聴く
失敗したとしても、最初から失敗しようと思ってする人はいません。よかれと思ってやった結果が、至らなかっただけです。
色々言いたいことはあるかもしれませんが、まず、3分で良いので、どんな風に感じているのかを評価判断せずに聞き、思いをくみ取ります。
そうすることで、部下の自覚が生まれやすくなり、また、指導を聞く耳が開きます。
2.長所や貢献している事、部下への期待を改めて伝える
叱る場面でわざわざ褒めるということではありません。本人の頑張っているところも上司として見ていることを伝えます。その為には、日常の様子をよく観察しておきます。
また、「こんな人になってもらいたいと思っている」など、部下への期待や思いも伝えます。
改善へのエネルギーとなります。
3.毅然としてダメなものはダメと伝える
「こんなこと言うと、後々やりづらくなるかもしれない」「自分もミスすることあるしな・・・」と、言わなければいけないことを避けてしまうことがあります。
それでは、その場が骨抜きになってしまいます。
同じ失敗を起こしてほしくないとしたら、相手の目をしっかりと見て、ダメはダメと毅然として伝えます。
残念ながら自分の当たり前は、部下の当たり前ではありません。部下に心から納得して改善してもらうには、組織の方針、ルールに法った理由を伝えます。
上司は信念を持ち、ぶれる事なく、伝えましょう。
4.改善に向けて考える場を作り、引き出す
上司はついついアドバイスをしたくなります。しかし、それでは、部下の主体的な改善にはつながりません。相手が何を改善すれば、次にうまくいくようになるのか、「どうやったらうまくいくと思う?」など質問で対策を引き出します。
部下から出てきた対策が未熟であれば、それも尊重しながら、検証できる行動を上司の側からも提示します。スモールステップで期限を切った対策を実行することで、達成感、自信にもつながります。
5.自己開示する
部下の失敗は残念ながら上司の責任です。責任者として、失敗させてしまったことに関して、自ら振り返る姿勢を持ちましょう。
ミスをしたら、部下には自らを振り返り、行動を改善して欲しいはずです。
上司として、言行一致の姿を見せることは、部下からの信頼にもつながります。
その他
叱る場所やタイミングに配慮するといったことも重要です。これは、叱られた本人が傷ついたり、恥をかいたと感じるだけではなく、他の部下、周囲にとって、明日は我が身になるので、失敗しないことしかしなくなったり、正直に報告せず隠ぺいを生み出すことにもつながります。
失敗を未来につなげ、組織力アップ
いかたでしたか?ミスはない方が良いのかもしれませんが、人間誰でもミスします。
部下がミスをした時は、部下指導の最も重要なタイミングです。
「効果的に叱る」ことは、部下に「気付き」「成長」「行動の変容」を促します。また、部下との信頼関係も強化されるでしょう。
最近では叱られることに慣れていない人も多いと伺います。
そのような背景もあり、「褒める」ことが注目を集めています。当然、褒める(認める)ことも大切ですが、褒めてばかりでは部下の自覚が育ちません。
ミスをしたその時にこそ、効果的に叱り、組織の方向性に沿った改善への支援、成長への支援をし、組織力アップにつなげていきましょう。
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